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「誰でもいいから助けて!」相談先が見つからずたらい回しになった介護家族

地方に住む相談者さんで、どこに相談すればいいかわからず、インターネットでかなり検索したものの、なかなか対応してもらえなかったようです。そして廻り回って知り合いから「あなたのところだったら対応してもらえるんじゃないかと思って」と電話がまわってきました。

 

「誰でもいいから助けて!」
相談先が見つからず、たらい回しになった介護家族

 

1.希死念慮に振り回される家族

介護を受けているのは高齢の男性で、世話をしているのは2人の娘でした。そして電話をかけてきたのは、2人の娘の大変さを見かねた離婚した妻でした。元夫は日常生活のすべてに介助が必要な状況で、家でトイレに行くのにも家族の解除が必要な状態でした。

さらに精神疾患があり希死念慮(死にたい願望)があるため、放っておけない状況でした。放っておくと食事をまったく摂らない、トイレにも行かない状態になるため、2人の娘が働きながら交代で泊りがけで介護をしていました。

しかしながら言うことを聞かない、大声で怒鳴る、暴言を吐くなどの行為があり、2人とも疲れ切ってしまっていると。介護・精神疾患・希死念慮という3つの症状が重なって、かなり厳しい状況でした。そして「誰でもいいから助けてください!」と訴えました。

 

2.精神科の対応

精神疾患に対する内服薬は、近くのかかりつけクリニックで処方してもらっているようでした。しかしながら内服を続けることが難しかったこともあり、上手くコントロールできず、入院措置になりました。

ところが入院後、薬が変更になったことが気に食わず主治医と言い争いになり、おさまりがつかず強制退院になったとのことでした。家での様子を伺っていて、おそらく暴力沙汰になったのではないかと推測しました。よって、もう入院対応はしてもらえない状況になっていました。

 

3.地域の対応

介護保険を利用しているため当然ながら地域包括支援センターが介入しているはずです。「ケアマネはどうしてますか?」と問うと、「何度も連絡してるんですが全然対応してくれません。訪問介護に来てもらってますがそれでは追いつかなくて…」と。

この状況で私に何ができるだろうか…?と考えました。日常生活の介助にかなり介護点数を使っているため、訪問介護に入る時間も限られているだろうし、この状態で受け入れてくれるデイサービスもないだろう。医療も対応しきれない状態で何が可能だろう?と悩みました。

 

4.介護制度の限界

おそらく地域包括支援センターを通して、ケアマネや訪問介護や訪問看護が介入しているはず。ですが訪問介護はよく来てくれても朝・昼30分ずつくらいで、訪問看護は週2~3回30分~60分程度です。それ以外は家族が見なければならない…という現状があります。それは介護度に応じて利用できる点数に限りがあるためです。

完全に寝たきりであれば介護度が上がり、利用できる点数も増えますし、逆に家族は介護がしやすくなります。もっとも大変なのは、ご本人が動ける状態で認知症や精神疾患がある状態です。ましてやこの方の場合は医療も対応しきれないため、これ以上は無理…という状態に達しているのだろうと考えられます。

しかしながら、私から地域包括支援センターに連絡をすることは可能かもしれないと思いました。外部から第三者である看護師がSOSを送れば、一時的にでも誰か動いてくれるかもしれない。せめて事件につながるような事態は避けたい…と思っての苦肉の策です。

 

5.落ち着きを取り戻した相談者

また翌日に電話をいただく予定になっていました。しかしながらかかってきませんでした。こちらからかけても電話に出ず…。気になりましたが遠方のためどうしようもありませんでした。そして翌々日に電話がつながって様子を伺うと、元妻の相談者さんは打って変わって落ち着いていらっしゃる様子でした。

ずっと眠剤を飲んでも眠れない状態が続いていたけれど、2日前に電話で話した後、ひさしぶりに眠れましたと。誰かに話したことで、気持ちが落ち着いたのでしょう。そして私の方から地域包括支援センターに連絡をしましょうかと提案しましたが、もうしばらく娘たちと力を合わせて頑張ってみます、とのことでした。

不安もありましたが、ご家族の気持ちが落ち着くことはとても大切です。家族が混乱していると、どうしても言葉がきつくなったり、無理矢理にご飯を食べさせようとしたりして行動が荒くなります。逆に家族が落ち着いた状態でいることで、不安定なご本人も落ち着くことができるのです。

ですが、どうにもならないときに「助けて!」ということも大切です。介護の大変さを理解している人はたくさんいます。誰かに話すだけで気持ちが落ち着いたり、一時的にでも誰かが来てくれることによって、その苦労をわかってもらうことができれば、また気持ちを持ち直すことができることもあるのです。私はまたいつでも連絡してくださいとお伝えして電話を切りました。

 

まとめ

誰も悪くない。介護に関わる人は、ご家族もケアマネも介護士も看護師もみんな一生懸命。ご本人も混乱していることでしょう。本来なら国が総力を上げて制度をつくるべきですが、日本は少子高齢化のため高齢者よりも若い世代に力を注がなければならない状態です。

ですがこれが介護現場の実際。ケアマネも介護士も高齢化して退職者は増えるばかり。一方で若い人は低所得で過酷な労働に入ろうとする人は少なくて。いずれは国も地域も限界が来るかもしれません。ということは、家族は自分たちの人生をご自身で守っていかねばならないのです。ここまでは自分の人生、ここから先は他者の人生と境界線をつくり、皆が自立していく道のりにあるのではないでしょうか。

今回は少々厳しい話になりました。地方にお住いの方からのご相談でしたが、いずれは都会にも同様の状況が起こり得るかもしれず、介護をするご家族に冷静に見極めていただくための参考例として掲載させていただきました。

 

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