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「人間は自然の一部」あらゆるものは巡り来ることを自然に准う日本の生命観

日本は四季折々

日本は島国、山や海が多く水が豊富な国です。自然が多いということは自然災害も多いということですが、そんな四季折々から私たち日本人は多くを学んでいます。植物の解剖生理を見ると、人間と同じというか、手本にしたいくらい真っ直ぐで素直な性質を持っています。小さくか細い体に、人間に勝るようなすごい力が秘められています。

強い風が吹いた後よくわかりますが、ポキッと折れてしまう木と、そうでない木があります。ただ太いから強いわけではない、ただ大きいから強いさけではなさそうですね。植物は移動できないため、一生その環境に適応し続ける人生を生きます。そして何一つ文句も言わず、限界まで自身の成長をあきらめず、まこと密やかに存在し続けています。

芽吹きは内発的動機

自然は私たちに在り方を教えてくれています。たとえば桜の花は、花見のチャンスを逃すとあっという間に散っていきます。「花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき」という放浪記の著者・林芙美子さんの名言は、聞き覚えのある人もいらっしゃるかと思います。芙美子さんはとても快活で自由奔放に生きた女性の印象を持たれていますが、47歳のとき突然心臓麻痺で亡くなられました。名書の裏側で人並ならぬ苦労があったという話があります。

桜の花が咲いているのは一週間~10日ほどですが、そのために桜は一年を費やします。春はまだ遠い晩秋の頃、桜の木はもう蕾をつけているのをご存じですか?固く小さな蕾です。ですが再び春が来て美しく咲き誇れることを当たり前のように知りながら、極寒の冬を耐え忍ぶのです。それは、寒い寒いと嘆くのではなく、地面の下で内側からエネルギーを湧き上がらせるための静かな時間。“咲く”を信じて疑わないから今耐えることができ、その切ないエネルギーは最も美しいエネルギーを開花することができるのです。

散ることも枯れることも彩のうち

桜が満開になり、われ美しと咲き誇っているかのように見える桜の花は、散ることを知りながら今この瞬間めいっぱい咲いています。散ってしまうからと、もしエネルギーを惜しんでいたら美しくはないでしょうね。限りある命を知りながら、今この瞬間をめいっぱい生きることが“命あるもの”の美しさなのです。だから散るときも潔くありません?パーッと一気に散る桜の花びらに、もしかしたら咲いているとき以上の美しさを私たちは感じているかもしれません。

樹齢100年と言われる桜の木があります。自然災害の多い国、日本で植物が100年生き残るのは並大抵ではないと思います。その姿を見て人は学び、大切に祀られてますね。そしていつか枯れるときがやって来ることも、桜の木は知っているでしょう。ですが人々を癒し、勇気を与え、皆に慕われている桜はきっと、最期を恐れていないと思うんですね。枯れることに抵抗し腐ってしまうよりも、「どのように朽ちるか?」が最期の色になるのではないでしょうか。

終わりの始まり

神社には古くなって朽ちた木や、落雷に打たれて割れたような痛々しい姿の神木を見ます。その太さから相当な年数を生き、この地の人々の歴史を眺めて来られたのだなぁと自然に想いを馳せます。…ということは、その木は終わっていないんですね。木そのものは終わっている感覚かもしれませんが、その木がどのように生きたかは周囲の人々の心に残っているものです。

人間は大切な人が目の前からいなくなると、すべて失ってしまうな気がして恐怖を抱きますが、深層はそうではありません。その人がどのように生きたかが心に残り、時に、生きているときも色鮮やかに映り出されます。いいえ、本当は、死ぬことはとても価値あることなのです。生きているときは受け入れてもらえなかった言葉が、力を増します。そうして魂は記憶とともに代々受け継がれていくのです。終わりは始まりなのですね。

終わりに

日本人は桜を見るのが大好きですね。暖かい春を迎え一帯が明るくなるため、ようやく…という感覚がどことなくあるのかもしれません。桜はとくに川沿いや池沿い、神社やお寺などに多く見られますが、死者の慰霊であることが多いそうです。神社やお寺は何となくわかりますが、川沿いに桜の木が多いのも関東大震災などの災害で亡くなられた方のためのものです。

ただ春だから、綺麗だから、という理由だけではなさそうですね。日本人には神性があるがゆえ、川や山や海などの自然、そして人に宿る霊性に惹かれるのでしょう。何となくソワソワして行くのも、桜の木の下で宴をすることも、日本を守り抜いて来た先祖をお悔やみしているのです。昔の日本のお葬式は故人を懐かしんで笑い話をしていたそうなので、きっとご先祖さまたちも花見でワイワイガヤガヤして喜んでいらっしゃると思います。

 

 

 

 

 

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