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「心正しく、体真くすれば疲れない」日本文化に垣間見る健康の秘訣

心正しく、体真く(たいなおく)すれば疲れない

この言葉は小笠原流・小笠原清忠さんの言葉です。小笠原流は日本の馬術、弓道、茶道などを、鎌倉時代から伝承している日本を代表する古武術です。「心正しく」とは「偽らざる心を持ち、常に平常心でいること」。「体真く」とは「体を真っ直ぐに保つ」ということ。そうすることによって腹筋、背筋、大胸筋などが鍛えられ、疲れにくい体が出来上がってくると仰っています。

ですが現代人は足を組んだり、片足に重心をかけて立っていたり、電車の中では吊革にぶら下がっているような姿勢をとります。このような姿勢はラクをしているようで、実は体を疲れさせます。体の中心がゆがむと酸素が入りにくく、細胞に必要不可欠な栄養が全身に行き渡らないのですね。予防は常日頃からの小さな積み重ねです。日本人は武道の精神によって「心正しく、体真す」が日常だったのです。

心身統一をめざす日本の所作動作

お能の舞台をご覧になったことがあるでしょうか。現代人には信じられないほど、ゆっくりとした動きです。ですが実はゆっくり動くことの方が難しいことがわかりますか?全身の筋肉を維持しなければならないからです。お能の特徴は、できるだけ体を上下させずにすり足で動くこと。これは日本文化だけの特徴です。同じ体勢で15分以上立ち留まっていることもあります。そして手先の動きにまで神経を行き渡らせ、言葉を使わず舞だけで物語を表現するのですね。

鎌倉時代に日本にお能を立ち上げたのは世阿弥です。世阿弥は現代にもいろいろ言葉を残しています。「初心忘れるべからず」も世阿弥の言葉です。舞台で演じる者の心得として「目前心後」という言葉も残しています。目は観客の方を向いているけれども、心は自分の後ろに置いて全体を観よ、ということでしょう。心が自分にあっては感動させられる舞ができない、自分を空(くう)にすることが重んじられていたようです。

呼吸を制する者は、その場を制す

呼吸は全身の細胞を維持するために必要不可欠な栄養です。ガス交換が3分止まれば脳死になると言われています。それほど大切な呼吸ですが、どれくらい意識しているでしょうか。考え事をしているとき、呼吸は浅くなっています。一つのことに囚われているときはもう、止まっているかもしれません。呼吸困難になるほどではありませんが、こうした積み重ねによって体の弱い部分が疲弊していきます。小笠原先生の仰る意味がわかりますね。

人類に欠かせない呼吸。ゆえに呼吸を自在に扱える者は、その場でいちばん影響力を持ちます。ゆったりとした呼吸は副交感神経を刺激し、体をリラックスさせます。逆に緊張しているとき、細胞にキュッと力が入っているので酸欠状態でパフォーマンスが上がりにくくなります。脳細胞も栄養は酸素なので同じ。酸素が十分に行き渡っているかどうかで、思いつくことも変わるのですね。体が真っ直ぐの状態を維持できるかどうかは、人生の幸せを左右すると言えそうです。

 

“座位”が真の休息

現代人は休日になると、どこかへ出かけるリフレッシュを必要とします。人ごみの中や遠方に出かけ、疲れた体に鞭打ってまた仕事に行きます。また、家でゴロゴロしたり、たっぷり栄養を摂ることが休養のように感じますが、真の休養は座位を維持することにあります。体を真っ直ぐに正し、酸素の通りをよくした状態で休むことが、体にとっては何よりも栄養補給になります。

さらに休息を深めるには瞑想がいいでしょう。日本では禅として古くから知られています。頭の中であれやこれやと想いが巡り続けていると疲れませんか?こころ(脳)=身体なのです。体を休めるために、わずかの時間でも思考を止めるとスッキリして体がラクになります。おそらく徹夜などのときにも効果があります。

日本文化は心と体の象徴

ここに挙げたものはごく一部です。ありとあらゆる日本文化は、心身一元論。体を自在にすることで心の自在を図り、心身統一の上に成り立っているため、おのずと健康になっていく文化です。文化とは常に体にまとわりついて離れない空気のようなもの、あるいは空気に漂うほのかな芳香のようなものなので、掴み取りにくいものです。

ただ、私たちはDNAとして受け継いでいるはずです。それは頭で思い出そうとしても無理で、身体の感覚に従うことのように思います。こうしたら気持ちいいな、こうしたら気持ち悪いなという感覚に、自分自身が従えるかどうか?ではないでしょうか。

 

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